「平成28年2月17日講演会
若槻裕子先生・岩崎深雪先生」


演者 若槻 裕子
日時 平成28年2月17日(水曜日)16時から18時
場所 済生会新潟第二病院
演題 「私の化粧(フルメーキャップ)の自己実現」
「女性にとって”化粧”とは何でしょう?」


若槻裕子先生の講演の様子(撮影日平成28年2月17日)

若槻裕子先生の講演の様子(撮影日平成28年2月17日)

講演要約

「女性にとって”化粧”とは何でしょう?」

街を歩いていて、お化粧をしている視覚障害の女性に出会うことはほとんどありません。その理由は、自分自身のお化粧した顔を鏡に映して確認することができないことで「お化粧はできないもの」と思い込まれているかたが多いからではないでしょうか?

私は介護福祉士と同行援護の資格を有していますが、友人に視覚障害の岩崎深雪さんという70歳の女性がいます。彼女は自分では化粧することができなかったため、私が彼女にお化粧をすることが当たり前になっていたのですが、彼女はその度に「申し訳ないね」と気遣った言葉を口にされていました。気遣う彼女に対して私は「大丈夫!」という、今となれば何とも無責任な表現しかできなかったのですが「視覚障害者は、自分でお化粧できないのは仕方ないこと」「視覚障害者はお化粧しても色が見えないし、綺麗になっていく姿も確認することができない」「だから他者(私)が彼女にお化粧をするのは当然のこと」と、こうした決め付けや思い込み、先入観がありました。ブラインドメイクに出会うまでは・・・

2015年2月、ブラインドメイクを考案された大石華法先生と運命的な出会いがありました。視覚障害の女性が自分1人で誰の手も借りずに、とても綺麗にお化粧をしている様子を生まれて初めて見て、感動のあまり鳥肌が立ちました。感動が収まらず、翌月から大阪の大石先生の元へ化粧訓練士を目指して新潟から月に1度、ご指導を受けに通うようになりました。そこではブラインドメイクのレッスンに通っている多くの視覚障害の女性との出会いがあり、彼女たちの声を直接聞かせていただくことができました。そこで感じた事は「綺麗になりたい」「綺麗でありたい」「美しくなりたい」との想いは、女性なら誰でも想い願う事であり、視覚障害の女性も美しくなりたいと願う、ひとりの“女性”であることでした。

私が大阪まで通い始めて2か月後のこと。「お化粧は一生出来ない、無用のもの!」と強く拒絶していた岩崎さんに「貴女なら絶対にお化粧できるようになるから!」と誘い、5月から一緒にブラインドメイクのレッスンを受けに大石先生の元へ通うようになりました。
70歳の彼女は、ブラインドメイクのレッスンを受ける毎に、パーツ化粧が1つ1つ綺麗にできるようになっていき、12月には、1人で綺麗にフルメーキャップまでできるようになりました。お化粧だけではなく、洋服やお洒落にも気を使うようになり、長い髪をバッサリ切り、毛染めやパーマもして、誰もが見違えるほど若くて綺麗になりました。

少し前屈みに背中を丸くして歩いていた彼女でしたが、背筋が真っ直ぐになって歩くようになりましたし、立ち居振る舞いまで女らしく変わってきたことには驚かされました。
周囲からは「明るくなったね!」「綺麗になったね!」「若くなったね!」「素敵ですよ!」と声をかけられることで自然と頬がほころび、嬉し恥ずかしそうな笑顔は、まるで少女のようです。その様子を見た側にいる周囲の人たちまでが笑顔になっていました。そして私自身も笑顔になっていることに気が付きました。視覚障害の女性がメイクをすることで、当事者ばかりでなく、周囲の人たちまで明るく、そして楽しくなることを実感しています。

ブラインドメイクのレッスンを受ける過程で“自分らしさ”をどんどん見出されて、自主性と積極性を持って生き生きとした生活を送られている視覚障害の女性が大勢いらっしゃいます。「お化粧をしたい」と心の底に押しこめられている声に出せない心の声に耳を傾けて、信頼される化粧訓練士となり、ブラインドメイクを広げていきたいと思います。


演者 岩崎 深雪
日時 平成28年2月17日(水曜日)16時から18時
場所 済生会新潟第二病院
演題 「私の化粧(フルメーキャップ)の自己実現」
-ブラインドメイクの出会いから1年ー


講演場所での集合写真(撮影日平成28年2月17日)

講演場所での集合写真(撮影日平成28年2月17日)


講演要約

私の化粧(フルメーキャップ)の自己実現
-ブラインドメイクの出会いから1年-
化粧に全く関心がなかった私が、平成27年2月に大石先生の視覚障害者が鏡を見ないでひとりで化粧ができる「ブラインドメイク」の講演会があることをしりましたが、私には関係ないことと思っていました。でも!私はカラオケ教室に通っているので、舞台に出るときに、もしかして一人で化粧ができるようになれば、人の手を煩わさなくてもいいようになるかも?と思って、同行援護者でもある若槻さんを誘って先生の講演を聞きに行きました。

講演を聞きながら正直「こんなこと私に出来ない。場違いなところに来てしまった。」とその場から逃げだしたくなりました。講演が終わり引き止められるのを振り切ってさっさと帰ってきました。その後「私と一緒にやろうよ。」と若槻さんに熱心に誘われ、とにかく一度行ってみて、それから断っても悪くわないだろうと思い、5月からブラインドメイクのレッスンを受けてみることにしました。

第1回目のレッスン(フェイシャル&スキンケア)後、乾燥していた唇が潤い、肌がツルツルになっていくことを手指で感じることができました。このレッスンで、自分の顔が愛おしく感じるようになり、知り合いからも「会うたびに綺麗になっていくのね」などと言われると、次第に気持ちが楽しくなりました。レッスンの度に綺麗に化粧ができるようになっていく自分を感じることで自信がつき、内面から変化していくことに気が付きました。そしてとうとうフルメイクができるまでレッスンを受けて、合格をいただきました。

レッスンは70歳を迎える私には、決して簡単なものではありませんでした。アイメイクでは、アイシャドーやマスカラはどこに塗ればいいのか、名前と場所が一致しなかったり、マスキングテープを張るのに四苦八苦しました。でも、今では出かけるときは必ず化粧をするようになりました。化粧をせずにスッピンで出かけた時は、いつの間にか下向きになっている自分に気がつきました。化粧をして出かけると、自分では無意識のうちに背筋を伸ばして、顔を上げて歩いています。

ブラインドメイクができるようになったお蔭で、自信がついて、姿勢もよくなり、気持ちも若返り、健康維持にも欠かせないものとなりました。
フルメイクができるようになっても、口紅がはみ出ていないかしら?チークはどうかしら?アイメイクはきちんとできているかしら?・・・、常に不安はついて回ります。周りに見てもらえる人がいればいいのですが、いないときは不安のまま出かけて、行先で「私のメイクおかしなところはない?」と聞くようにしています。「綺麗にできてるよ」と言われた時はほっと胸をなでおろします。おかしなところがある時などは「お願い!申し訳ないけどちょっと直して!」とお願いするようにしています。でも、残念なことにおかしいところがあっても黙っている人が多いように感じます。

「教えてあげて気を悪くしないかしら?」などと思わずに何気なく教えてくださる方が身近にいてくれると、どんなにか助かることでしょう。教えていただくだけでなく、それを直していただければなお嬉しいです。
そのためにも視覚障害者に関わる方々に、ぜひこのブラインドメイクの化粧技法を覚えていただいて、中途失明で家に閉じこもりがちの女性や視覚障害者の女性に外出の喜びや楽しさを教えていただきたいのです。ブラインドメイクを教えていただける化粧訓練士が1人でも多く私たちのような視覚障害者のためになっていただけることを願っています。